自宅が浸水したとき、やるべきことは3つあります。
- 片付ける前に、被害状況をスマホで撮影する
- 火災保険の保険会社(代理店)に連絡する
- 市町村に罹災証明書を申請する
②と③は窓口も目的も別の手続きです。同時にやるのが、お金を早く受け取る最短ルートになります。
この記事では、撮影のコツから保険・支援金の申請、被災地で多発する悪質業者への注意点まで、時系列でまとめました。
自宅が浸水したら、まずやること:安全確保と「証拠写真」
安全がすべてに優先
浸水した家屋では感電やガス漏れの危険があります。ブレーカーを落とし、ガスの元栓を閉め、長靴・手袋を着けてから作業を。避難指示が出ている間は、自宅の確認より避難の継続を優先してください。
片付ける前に写真を撮る
被害の程度は、火災保険の損害調査でも罹災証明書の被害認定でも「証拠」で判断されます。先に掃除をすると被害の痕跡が消え、受け取れる金額が減るおそれがあります。
ただし、証拠を残すために片付けを我慢する期間は撮影までのわずかな時間だけ。撮影が済んだら、カビや衛生上の問題が進む前に、速やかに片付け・乾燥・換気・消毒へ移ってください。
撮影データはクラウドへ
スマホが水没・故障するとデータごと失います。Googleフォトなどへの自動アップロード設定か、自分宛てのメール送信で必ずバックアップを。電波が不安定なら、回復したタイミングで確実に。
証拠写真の撮り方【3つのポイント】
内閣府のリーフレット「住まいが被害を受けたとき最初にすること」に沿った撮り方です。
1. 建物の全景
建物の外観4面を、離れた位置から撮ります。損傷がない面も撮っておきましょう。自宅を見下ろせる場所があれば屋根も。
2. 浸水した深さ
メジャーを壁の浸水線(水に浸かった跡)に当てて撮影します。次の3点セットが基本です。
- 深さを測っている様子がわかる写真
- 目盛りが読める近景
- どの部屋・どの壁かがわかる遠景
浸水の深さは保険金の支払基準にも被害認定にも直結します。外壁と室内の両方で測っておきましょう。
3. 被害箇所
箇所ごとに「遠景+近景」の2枚セットで。指を差して撮るとわかりやすくなります。床・壁・畳・家具・家電・車まで、被害を受けたものはすべて撮影を。
お金の入口は2系統|火災保険と公的支援は別の手続き
| 火災保険(水災補償) | 公的支援(支援金など) | |
|---|---|---|
| 窓口 | 保険会社・代理店 | 市町村 |
| 罹災証明書 | 原則不要 | 必要 |
| 調査 | 保険会社の鑑定人 | 市町村の職員 |
よくある誤解が「罹災証明書がないと保険金がもらえない」というもの。実際には火災保険の請求に罹災証明書は原則不要で、保険会社が独自に損害調査を行います。証明書の発行を待ってから連絡すると、その分だけ保険金が遅れるだけです。
火災保険(水災補償)の請求方法
台風や大雨による浸水は火災保険の「水災補償」の対象です。ただし保険料を抑えるために水災補償を外している契約もあるため、まず保険証券やマイページで補償の有無・保険金額・免責金額を確認しましょう。
支払基準に注意
水災補償には所定の支払基準があり、一般的には次のいずれかを満たす場合に支払われます。
- 床上浸水、または地盤面から45cmを超える浸水
- 建物や家財の30%以上の損害
このため、床下浸水にとどまる場合は対象外となるケースが多い点は知っておいてください。
請求の流れ
- 保険会社・代理店に事故の連絡(電話・アプリ・Web)
- 届いた請求書類に、写真・修理見積書などを添えて提出
- 必要に応じて鑑定人の現地調査
- 保険金の支払い
請求期限は「原則3年」ですが、時間が経つほど災害との因果関係の証明が難しくなります。できるだけ早く行動しましょう。
罹災証明書を早く受け取る方法
罹災証明書は、市町村が住家の被害程度(全壊〜一部損壊)を認定・証明する書類です。
被災者生活再建支援金、応急修理制度、税や保険料の減免、義援金の配分など、ほとんどの公的支援の入口になります。
大規模災害では現地調査の順番待ちで、発行まで数週間〜数か月かかってしまうこともありえます。できるだけ早く受け取るポイントを2つ紹介します。
【ポイント1】早めに申請する
罹災証明書は申請しないと発行されません。
市町村の窓口のほか、マイナポータル(ぴったりサービス)でオンライン申請できる自治体も増えています。
【ポイント2】被害が軽微なら「自己判定方式」
床下浸水や外壁のひび割れなど被害が軽微な場合は、提出した写真だけで判定する自己判定方式が使えます。
現地調査の順番待ちがなく、自治体によっては即日〜数日で発行されます。
利用できるのは「準半壊に至らない(一部損壊)」の認定に同意できる場合のみ。
床上浸水など被害が大きい場合は現地調査が必要ですが、浸水直後の写真があれば実態に即した認定を受けやすくなります。
罹災(りさい)証明書の交付における「自己判定方式」は、2016年(平成28年)の熊本地震の際に一部の自治体(熊本県合志市など)で試行・採用されたのが最初の本格的な始まりです。 その後、2018年(平成30年)の大阪府北部地震の際、多数の一部損壊家屋に対して多くの自治体(高槻市や茨木市など)で本格的に導入され、即日交付などの迅速化に大きな成果を上げました。
この2018年の運用実績を経て、内閣府の公式な手引きや指針にも組み込まれるようになり、全国の自治体へ普及していきました。
受け取れる公的支援まとめ
被災者生活再建支援制度(最大300万円)
住宅が大きな被害を受けた世帯への国の支援金で、被害程度に応じた「基礎支援金」と再建方法に応じた「加算支援金」の2階建てです。
- 全壊・解体・長期避難:基礎100万円+加算(建設・購入200万円/補修100万円/賃借50万円)
- 大規模半壊:基礎50万円+加算(同上)
- 中規模半壊:加算のみ(建設・購入100万円/補修50万円/賃借25万円)
単身世帯は各金額の4分の3。半壊・準半壊・一部損壊は対象外です。
※2026年8月時点。支援金の増額に向けた法改正の議論が国会で進んでおり、金額が変わる可能性があります。
そのほかの支援
- 応急修理制度(災害救助法):半壊等の住宅の日常生活に必要な部分を市町村が業者に依頼して修理(限度額あり)
- 自治体独自の支援金・見舞金・貸付
- 税・保険料の減免、支払い猶予(住民税・固定資産税・国保料など)
- 義援金(被害程度に応じて配分)
被災時は、市町村公式サイトの「被災者支援」ページを確認するか、窓口でまとめて相談するのが確実です。
注意:「保険金で無料修理」の勧誘トラブルが多発
被災地では「火災保険を使えば自己負担なしで修理できる」「保険申請をサポートします」という勧誘のトラブルが全国で多発し、国民生活センターや損害保険協会が繰り返し注意喚起しています。
- 手数料として保険金の3〜5割を請求された
- 解約を申し出たら高額な違約金を請求された
- 実際にはない被害の申請を促され、保険金詐欺に加担しかけた
保険金の請求は、写真と見積書があれば契約者自身で十分できます。報酬を得て申請を「代行」する行為は弁護士法に抵触するおそれも指摘されています。訪問や電話で勧誘されてもその場で契約せず、困ったら消費者ホットライン「188」、保険会社とのトラブルはそんぽADRセンターへ。
よくある質問
Q. 床下浸水でも火災保険は出ますか? A. 支払基準に達せず対象外となるケースが多いですが、契約によるのでまず保険会社に確認を。罹災証明書は自己判定方式で早く取得でき、自治体の見舞金などの対象になる場合があります。
Q. 罹災証明書の申請に期限はありますか? A. 自治体ごとに受付期間が定められるのが一般的です(災害から数か月程度が多い)。支援制度の申請期限にも関わるため早めに。
Q. すでに片付けてしまいました。もう申請できませんか? A. できます。残っている被害箇所の写真、修理の見積書・領収書、浸水の痕跡などが判断材料になります。あきらめずに保険会社と市町村へ相談を。
Q. 賃貸住宅の場合は? A. 建物の損害は大家さんの保険の範囲。自分の家財は、入居時に加入した家財保険(水災補償の有無を要確認)で請求します。罹災証明書は入居者も申請できます。
Q. 車が水没しました。火災保険で出ますか? A. 車は自動車保険の車両保険の範囲です(水災は一般型・エコノミー型とも対象が一般的)。加入している損保会社へ連絡を。
まとめ
- 片付ける前に「全景・深さ・被害箇所」を撮影し、クラウドに保存。撮影後は速やかに乾燥・消毒
- 火災保険は保険会社へ、罹災証明書は市町村へ。2つの手続きを同時並行で
- 被害が軽微なら自己判定方式で罹災証明書を早く取得
- 「保険金で無料修理」の勧誘には乗らない。困ったら188へ
平時のうちに、火災保険の水災補償の有無と、お住まいの地域のハザードマップを確認しておきましょう。
※本記事は一般的な情報です。補償内容は保険契約により、支援制度の運用は自治体により異なります。必ずご自身の契約内容と自治体の最新の案内をご確認ください。
